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2009.06.11 Thursday  【就活シネマvol.05:サンキュー・スモーキング】“情報操作”の煙たい話。

評価:
コメント:“情報操作”の煙たい話。 父子の交流を描いたヒューマンドラマとしても充分に楽しめる。政治的にもウィットに富んだ、まさしく煙たい傑作。 「自らの論説が正しいことよりも、テーマをすり替えてでも相手が間違っていることを証明することが重要」という論理展開が痛快だ&
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人類の歴史において、銃やアルコールより、最も人を死に追いやったもの――それはタバコである。

映画の中でも、年間統計から導き出された1日あたりの死亡者数を比較して、銃で1日に30人、アルコールでは270人に対して、タバコは1200人(年間43万5000人)の命を奪うとしている。

日本でも近年、社会的な嫌煙活動が進展し、全面禁煙の飲食店が増加、「嫌煙」は良識者のマナーという認知が確立されたように感じる。
街中で歩きタバコをする人も少なくってきた――正しい言葉を使えば、街中で歩きタバコをする人に自然と軽蔑のまなざしが集まるようになった。

JT(日本たばこ産業)では、喫煙におけるマナーについて熱心な広告展開を繰り広げてきたが、パッケージでの注意勧告(この手法は海外が先行)など、ビジネスにおける“矛盾”と戦うその姿勢には敬意を表したい。
戦略として、愛煙家向けにパッケージやフレーバーに贅を尽くし商品個々のブランディングを強化したり(この映画でも「喫煙は個人の選択だ」という見解が語られている)、「こんなところにもJTが」というかつてのCMにもあるとおり、コーヒー飲料や食品、医薬品分野にも積極進出している。


■テーマはズバリ、情報操作。

前置きが長くなったが、本作『サンキュー・スモーキング』について。

主人公のニック・ネイラーは、タバコ研究アカデミーの主任スポークスマン。
タバコ産業のロビイストを務め、マスコミからは「情報操作の王」と揶揄されている。
「ロビイスト」という言葉に耳慣れない方へ説明を加えると、圧力団体や企業のエージェントとして、政治家や政治団体に対して根回しや広報工作を行う専門家を指す言葉である。

タバコ研究アカデミーが存在する大義名分は、喫煙が人体・環境系に及ぼす影響について研究することにあると錯覚しがちだが、タバコ産業から莫大な研究資金を得ている以上、タバコの害を立証することに決して熱心ではない。
中東問題への武力解決に熱心だったブッシュ前大統領が、石油ビジネスの出身者であり、彼が所属する共和党は全米ライフル協会から莫大な政治資金を得ているのは有名な話。
そこには同質の論拠が見え隠れしている。

公式サイトにも監督の言葉として記されているが、本作では喫煙シーンがひとつとして存在しない。
タバコを題材に、タバコ産業VS嫌煙運動家の物語を描いているにも関わらず、だ。
なかなか練りこまれた逸品だと感心しつつDVDの映像特典を見ると、何故か喫煙シーンが…
これは、ライトマン監督流の“情報操作”ジョークだろうか?


■営業マンと広報担当、そして父子家庭のお父さんにオススメの傑作

父の仕事を理解しようと努める息子に、ロビイストの仕事とディベートの極意を披露するニック。
仕事における適正については、「柔軟な道徳観念が不可欠」だと語る。

チョコアイスとバニラアイス、どちらかのアイスを弁護することを喩えに、「自らの論説が正しいことよりも、テーマをすり替えてでも相手が間違っていることを証明することが重要」という論理展開が痛快だ。

父子の交流を描いたヒューマンドラマとしても(本当のテーマはこれかもと思わせて、実はここにも情報操作のカラクリがあるようにいぶかしんでしまう)充分に楽しめる。
政治的にもウィットに富んだ、まさしく煙たい傑作。

「就活シネマ」としてのポイントは?と問われれば、「最終的に自分の仕事と才能を信じること、というニックの決意に倣おう」と説こう。

これはコラムとして成立させるための抗弁かも知れないが(情報操作?)。

営業トークにニックの論法を真似てみるのも一興だが、大切なクライアントに煙たがられぬよう注意が必要である。

なお、このコラムも偏った情報で構成されている点は否めない。
情報の取り扱いも、転職と同じく、慎重に。


※本エントリーは、某人材紹介サイトで2007年に連載していた映画コラムを一部改変したものです。






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